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 知り合いの塾長が急逝した。享年52歳、あまりにも早すぎた門出だ。
 前日まではいつもと変わらず、ただ、「最近調子が悪くてね」と話されていたそうである。
 その方とは、ある塾の団体で知り合い、もう20年近いおつき合いになる。しばしばお会いしていたわけではないが、「オヤッ」と思う場で出会うことがよくあった。1ヶ月ほど前もある研修会で一緒になり、「いやぁ、妙なところでお会いしましたね」と声を掛け合った。まさかそれが最後になるとは思いもよらなかった。
 その研修会は日曜日だった。少々疲れ気味で出かけるのが億劫だった。しかし、とても勉強になった一日だった。そして、今、あれが最後だったかと思うと、出かけて本当によかったとしみじみ思える。
 飄々とした方で、何ごとに対してもとらわれのない方だった。お目にかかるといつも私に新しい視点と、清涼感を与えてくれる人だった。
 
 告別式は滞りなく終わろうとしていた。ところが、最後に、喪主の奥様がご挨拶とともにピアノを演奏された。こんな経験ははじめてだった。ショパンのノクターン遺作を演奏された。これまで、何度も何度も耳にしてきた曲だ。
 途中の展開で和音が少しリズミカルに鳴る場面がある。前半の哀しいメロディーが、さらに哀しい和音で中和されるように感じるところだ。「あの方らしい曲だな」と改めて感じた。これから、このノクターンを聴く度に、あの塾長を想い起こしそうだ。

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