ISO21001認証

伸栄学習会は令和2年4月、BSI社よりISO21001の認証を取得しました。また、6月2日には認証授与式が行われました。学習塾及び教育研修事業者としてはBSI社初の認証取得となります。 ISO21001とは学習サービスの質を国際的に保証するものです。これを機に伸栄学習会としては、より充実した授業を行う所存です。


ISOとは

     18 世紀中頃、イギリスで起こった産業革命は各国に伝播しました。その結果、先進諸国では機械化が急速に進展しました。従来の手工業製品は、全く同じものが作 られることはなく一品ごとに異なっていました。しかし、機械で作られる工業製品は、すべて同じ仕様で作られるようになりました。 この結果、部品等では互換性が必要となり、「規格」という概念が生まれました。工業製品が国境を越えた場合、これはさらに重要な意味を持つようになりまし た。民族や習慣が異なる国際取引では、相互理解を高め互換性を保証するには規格化は不可欠です。同時に規格化なくしては、最終的な消費者の利益を図ること も困難となりました。
これらを背景に製品の品質、性能、安全性、試験方法などに対して国際的な取り決めがされるようになりました。これが、「国際標準」という概念で、この国際標準化のために生まれた規格がISOです。

ISOとはInternational Organization for Standardizationの略です。日本語では「国際標準化機構」と訳されています。本部はスイスのジュネーブにあり、現在では170ヶ国で 15,000以上のISOの規格が認証されています。
ISOの目的は、規格に合った商品を提供することにあります。例えば、ネジはさまざまな機 械類などに使われています。もし、この規格が統一されていなかったら、汎用性がなってしまい、無数のサイズのネジを作らなければならなくなります。また、 規格を統一しても、万一、ある工場が作ったネジに狂いがあったら、これを使った製品に多大な影響を与えます。 規格にあったネジを生産するためには、工場の管理をしっかりするのは当然として、ネジの原 料の調達やネジを作る機械、さらには工場で働く人々やその会社の経営システムにも目を光らせる必要があります。つまり、信頼のあるネジを作るためには、単 に、製造現場だけではなく、その会社全体のマネジメントシステムを構築していく必要があります。 ISOの認証は、最終的にはお客様に満足・感動・安心・信頼していただくことにあります。 そのためには、社内の役割分担をはっきりさせ、仕事の手順・ルール・基準を決め、決めたとおり忠実に確実に実施して、その証拠として記録を残す必要があり ます。つまり、社内全体を良くすることにより、消費者に信頼できる会社となることが目的となります。


ISO21001とは

ISO21001は2018年に発行された教育組織全般向けの国際規格です。それまでにあった「非公式教育・訓練」事業者のためのISO29990の発展させたマネジメントシステム規格です。文部科学省が管轄する学校(これを「公式教育」と称します)を含むすべての教育サービス、 例えば、学校、学習塾、資格取得の各種スクール、研修事業を行っている派遣会社などがこの対象となります。 欧米諸国では、イギリスの幼稚園を出て、小学校はフランスで学び、中学高校はドイツで、そ して大学はオランダで学ぶというケースもあります。この場合、それぞれの国の教育内容が規格化されていないと、国境を越えて教育を受けることができなくな ります。ISO21001はこれを解決するために欧米諸国で検討が開始されました。

昨今、少子化の流れから、一人ひとりの子どもにかける教育費は増加しています。また、社会 のニーズから、各種ビジネス関連の学校や教育訓練施設なども増加しております。学習・教育のサービスについて社会の関心が高まる中で誕生したのが ISO29990であり、ISO21001です。これらの規格の目的は、教育のサービス事業者が、専門的な学習サービスの品質を向上して、消費者など関連企業や個人の質的向上 を寄与することにあります。



ISO21001の認証取得に至る経緯

授業の良し悪しは教師・講師の力量によるところが大きく、保護者の間では、「当たりの先生」とか「外れの先生」という言葉も使われるようです。理想的にはすべての先生は 「当たり」になるべきですが、現実はそうはなっていないようです。しかし、仮に100人の先生がいた場合、99人が「当たり」でも1人が「外れ」だったと したら、その1人の先生に担当された子どもは、大きな被害を被ることになります。 一般的に、先生は良くも悪くも職人気質を持っているのが実情です。子どものためには日々努 力を惜しまず、ある場合には自己犠牲も厭いません。朝から晩まで、子どものことや授業のことを考え続けている先生もいくらでもいます。しかし、その反面、 自己中心的で、自分の判断だけでものごとを決めてしまう傾向もあります。このため、子どもや保護者の考えと先生の考え方にズレが生じてしまうことも珍しく ありません。 従って、先生の個人的な努力に任せてしまった場合、どうしてもある一定の確率で「外れ」の 先生が出てしまいます。先生個人がいくら一生懸命に努力しても、塾全体として方向が明確でないと、個人の良かれとと思った行動が、全体に悪影響を与えま す。この問題を解決するには、単に授業のこと、単に先生のことだけを考えていたのでは解決に至りません。塾全体をトータルなシステムとして捉え、先生をは じめスタッフ全員がこのことを共通認識として持っておく必要があります。

このような問題意識から、10年以上前よりISOの認証取得を考えてきました。しかしながら、当時は教育サービスのための認証はありませんでした。敢えていえばISO9001があるのでしたが、この規格は主に製造業のためのものであり、馴染みにくいものでした。 そんな折、ISO29990が発行されました。この情報に接し、直ちに認証取得に向 けて体制を整備しました。対象が教育サービス事業者となっておりますので、学習塾部門だけではなく厚労省委託教育訓練部門についても認証を得ることにしま した。認証はISOについて最も経験の深いBSI社(British Standards Institution:英国規格協会)に依頼することにしました。同社は1901年に工学標準化委員会として設立されて以来、147ヵ国以上で活動している会社です。 平成23年4月11・12日に第2次審査が終了、5月9日に同社より正式な認証を受けるこ とができました。ISO29990の認証は国内で2例目、「学習塾」及び「教育訓練事業」としては初の認証となります。

さらに伸栄学習会は、福祉部門として放課後等デイサービスの運営を開始し、また学校法人として通信制高校の運営に乗り出しました。そこで、ISO29990を公的教育機関(学校等)にまで発展させた新しい教育マネジメント国際規格ISO21001の取得を決意しました。厳正な審査を受け、令和2年4月に認定を受けることができました。

これを契機に、生徒・保護者及び関係者の安心感や満足度の向上に寄与したいと願っております。


最高の授業の実現を目指して

当社としてはISO21001の運用を通じて最高の教育を提供する学習塾・教育訓練校になりたいと念じております。そのために、さらなる改善を図っていく所存です。  第1にスタッフ全員が、いつでも最高の教育をサービスを提供できる体制を整えることで す。先にも述べましたとおり、とりわけ教師は職人的気質に傾きがちです。

 

もちろん、これはすべて悪いことではありません。ただ、学習塾も教育訓練も複数の スタッフの協調の上に業務が成り立っています。日々の業務の目的は最高の教育サービスを提供することです。この原点を明確にして迷いが生じたときには、い つでもここに立ち戻れるようにしていく所存です。 第2にスタッフ全員の業務遂行の手順や目標を明確にすることです。業務について成文化できるものは成文化して、個人による判断のズレを最小限にしていきたいと考えます。アクションプランを明確にして、その結果を記録を残して、日々、授業の改善などにつなげていく所存です。 第3に到達目標を明示して、スタッフに能力開発の必要性を認識させたいと考えます。中国 の古典『学記』に“教学半(キョウガクナカバ)”という言葉があり、「教えるということは即ち学ぶこと」を諭しております。この言葉に従えば、良き教師で あるためには、良き生徒でなければならないということになります。

生徒に学ぶ喜びを与えるには、教師自身が喜びをもって学ばなければなりません。つまり、 当社の職員は、学びの喜びを実践し続ける義務を有することになります。このことを単なる約束としてではなく、国際的に認められた認証規格である ISO21001の中で実践していきたいと考えます。