2012年夏-2号……『関数』 塾長/青沼 隆
2学期の中頃、中学生は各学年とも数学で「関数」の単元に入ります。辞書には、「二つの変数x、yがあって、xの値が決まれば、それに伴ってyの値がただ一つ決まるとき、yはxの関数であるという。」とあります。
この関数、多くの子どもが苦手にしています。ちなみに、中学生に「キライな数学の単元は?」と質問すると、「文章題と関数と図形!」という答えが定番となっています。
関数は辞書にあるとおり、xの値が変わるとyの値も変わります。ですから、子どもたちは、数値が定まらず「フワフワして捉えどころのない」と感じているようです。それに、その前まで学んだ計算が解けないと関数は解けません。だから基礎のない子は、関数がわかりようがありません。その上、グラフの書き方や立式の仕方など関数特有の知識も必要になります。そして極めつけは、関数の導入部分が文章問題形式になっていることです。関数の概念を理解させるための配列ですが、そもそも多くの子どもは文章題が嫌いです。直前に方程式の文章題で苦労していることもあり、「またか………」という拒否感が起きるのも当然です。
導入でウンザリして、計算部分で引っかかって、関数特有の知識を修得しきれず、さらに「フワフワと捉え所がない」と子どもの多くが感じています。キライになるのは当たり前かもしれません。30年前、塾の講師になり立てのころ、私自身も関数の指導で絶望感を感じました。
ただ、今はだいぶ違います。関数の指導には多少の自信を持てるようになりました。私を含め、伸栄学習会では「関数とは代入なり」という言葉を呪文のように言わせています。というのは、中学生の関数は基本的にすべて、「代入」によって、即座に、方程式か正負の計算に置き換わるからです。
子どもから「わかりません」と言われたら、「関数とは?」という問いを発することにしています。「代入なり」という答えがあったら、多くの場合ヤマは越えています。代入の具体的なやり方を教えると、後は、自分の力で問題を解けるようになります。
関数に限らず数学全般に言えることですが、1つの問題の解き方は何通りもあります。もちろん、どのような解き方をしても、必ず正答に行き着くことができます。しかし、それらの解き方の中で、どの方法が最もシンプルでわかりやすいかとなると、方法は何通りもありません。恐らく、最もシンプルでわかりやすい方法は1つではないかと思ってます。塾の教師の役割は、その1つの方法を子どもに教えきることではないかと思います。
もちろん、そのためには子どもだけではなく講師の研鑽も必要です。教えることは即ち学ぶことだと改めて考える次第です。