講師 山内雄司
緊急事態宣言が延長されました。
“おうち時間”が増えた生徒のみなさんも多いのではないでしょうか。
前代未聞の状況下、塾の講師の私としては学ぶ面白さに気づき、“勉強の時間”が増えれば、と願ってやみません。
塾でたまに次のような子どもに出会うことがあります。
A 勉強はとことん面倒くさがるが、部活(運動部)には真面目に取り組む。
B 先生には逆らうことがあるが、部活の先生や先輩には従順。
C かなり本気で「勉強なんて役に立たない」と信じている。
恐らくこのようなタイプの子どもは、どんな環境にも一定数存在するように思えます。ですから、こういう子どもに出会ってもさほど意外には思わないのですが、ただ、改めてよく考えてみると不思議な感じがします。
たとえば、Aのタイプ。ご存知の通り、部活は不合理な面もあります。一人ひとりの特性には目をつぶって全員一律のトレーニングをさせる、団体行動の徹底のために待ち時間などのムダがある、なかには、「スポーツにケガはつきものだ」と言い、膝や肩などに故障を起こさせる指導者も少なくありません。(大切な生徒が傷を負っている姿を見て、憤りを感じることがしばしばあります。)
それに比べて勉強は自分のペースや得意不得意に応じた取組が可能です。他の生徒と勉強の開始・終了時間を合わせる必要もありません。
ただ、部活を通じて大きな学びを得ることもあります。諦めない心、仲間との交流、体力や能力の伸長を通じて自分を知るなど、すばらしい面もたくさんあります。そうは言っても、それでも、多くの子どもにとって、将来の進路開拓に繋がりやすいのは、やはり「勉強」です。
「勉強を教える先生は尊敬できないが、部活の先生や先輩は尊敬できる。」という子どももいます。勉強を教える先生が本当に尊敬に価しないというのであれば、教育界の片隅にいる者としては身の縮む思いがします。ただ、これもいかがなものかと考えています。
Bタイプに多く共通するのは、「部活は面白いけど、勉強は面白くない」と口にすることです。これも不思議な現象です。そもそも、興味のあること、面白いことだけに専念して人生を切り拓くのは至難の業です。部活についても、一流と評価される選手になるには、厳しく地味な練習も必要です。指示されたことを右から左にこなすだけではなく、自ら設定した課題に取り組むことも必須です。もし、こんな厳しい取組をしているなら、安易に「面白い」という言葉を使わないのではないかと感じています。
よく、「勉強なんかいらない! それでも俺は成功したぞ!」という、ミュージシャンや芸能人、企業家や政治家などの話が話題になります。この言葉を真に受けると、確かに「人生で勉強なんか必要ない」となります。そして、タイプCの子どもは多くは、この言葉に感化されています。ただ、常識的に考えれば、このような成功者は確率論的にごく少数です。それに忘れてはならないのは、これらの人々が辿った道は、筆舌に尽くしがたいほど厳しい道であった可能性が高いことです。
以上のような話を「タイプABC」の子どもにすると、耳が痛いのか、不愉快な顔になります。自分の弱さを指摘されていると感じているのかもしれません。下手に話を進めるとますます意固地になって、妙な方向に進んでしまう恐れもあります。ですから、話は慎重にすべきだと感じています。
さて、緊急事態宣言下にある今、目の前の子どもたちのために私たちができることは何でしょうか? それは、「勉強は面白い」「自分の力で自分の可能性を広げていくというのはこういうことか」という実感を持ってもらうことではないかと考えています。
コロナ渦の中、“おうち時間”が増えました。この時間を、是非、有効に活用すべきです。読書・芸術・教養・体育などの時間、それに加えて、“勉強の時間”を増やして、将来を切り拓いて欲しいと願っています。
このコロナ禍をひとつのチャンスに転換してもらえればと思います。