2019年6月号……『行ってきました KAMAKURA』 講師/山内 雄司
6月2日(日曜日)、行ってきました鎌倉史跡探訪。直前のキャンセルもあり、小人数の気兼ねの無い小旅行となりました。何人かの生徒は事前勉強会で鎌倉時代の特徴についてイメージと課題を持って臨んでいます。
今回の鎌倉史跡探訪での目的は大きく二つです。ひとつ目は、「現代の日本人まで多くの人が共通して抱く美感について」です。日本人は絢爛豪華な装飾よりも、自然との一体感や「わびさび」を感じられる景色を好む傾向がありますが、それは鎌倉時代以降の文化と大きく関係があります。このような文化があるから禅宗が根付いたとも言えるぐらいです。今回の旅行では、こどもたちにそれをたっぷり満喫してもらいたかったのです。
もうひとつは、学校の遠足ではできない鎌倉の楽しみ方を味わってもらうことです。ですから、遠足の定番である高徳院、長谷寺、銭洗い弁天などはあえて避けました。
さて、鎌倉駅から休憩も挟まず目指したのは報国寺。早速目に飛び込んできた苔と竹の鮮やかな緑に子どもたちも驚きの声を上げ、写真を撮り始めます。ここでは美しい竹林を眺めながら、湧き水の音とホトトギスの声をBGMに抹茶を楽しみました。「初めて飲んだけど飲みやすい!」しばし水墨画のような世界を堪能していると団体の観光客が押し寄せ、あれよあれよという間に行列ができました。それを潮時に報国寺を立ち去ります。
次は由緒正しい覚園寺へ。こちらはぐっと観光客の数も減り、まさに山中の古寺。住職に案内されて、まるで「もののけ姫」の舞台のような、まぶしいほどの新緑の中を泳いでいるのではと錯覚するほど美しい境内を歩き、室町時代の御堂に圧倒されました。天井の梁に書かれた足利尊氏の自筆の書に驚きの声を上げ、洞窟に灯るろうそくの明かりの美しさにため息をつきます。そこでなぜか突然バナナの香りが。住職の話では一円玉にも描かれているおがたまの木、その花の香りだそうです。みんなで花に鼻を押しつけ、不思議な香りを確かめます。
小町通りでは揚げたてのキス天に舌鼓を打ち、焼きたてのおせんべいを味わいました。鶴岡八幡宮では、国語の授業で習った漢文の「神楽」を実際に聴くことができました。文化財の展示で、昔の日本人の座り方や刀の持ち方を観察し、職員の方から三つ巴の意味を聞きます。境内にある稲荷神社では昔通りの作法でお参りし、中世の人の感覚を体験できました。そのときの生徒の「すがすがしい!」という声は忘れられません。
その後も、歩いている途中で、「先生、ここが話していた切通しの跡じゃないんですか?」と大正解をする生徒の観察力に白旗を上げ、円覚寺を見学して帰路に就きました。
最後に、浦安に戻ってきた生徒がポツリと言った、「ここは自然が無いね」という言葉が重く聞こえました。そういう言葉が出るほど別世界を楽しんでくれたのだとも思います。