講師 山内 雄司
千葉県教育委員会は、本年実施の公立高校入試で採点ミスのあったことを公表しました。
驚くのはその件数の多さです。
採点ミスの件数
県立高等学校:120 校中 92 校 870 件
市立高等学校:7 校中 6 校 63 件
上記のうち合否に関わるもの
県立津田沼高等学校(2 名)
県立松戸高等学校(1 名)
県立柏中央高等学校(1 名)
県立成田北高等学校(1 名)
千葉市立稲毛高等学校(1 名)
かつて、私が勤務していた某大手塾では、模擬試験の採点は二重三重にチェックを行い、絶対にミスの起こらないように細心の注意を払っていました。この常識に従えば、本番の入試ではそれ以上の手間をかけているもの、特別な事情がない限り採点ミスなんて起こりえないものと信じてきました。千葉県の入試管理体制は大問題です。
ただ、私がここで申し上げたいのはそのことではなく、なぜ採点ミスが発覚したのか、ということです。
今回の騒動の発端は、開示得点を取得した生徒が、「自己採点と大きく違う」と抗議したことがきっかけです。開示得点とは実際の入試得点のことです。受験生は誰でも希望すれば、入試得点や内申書を見せてもらうことができます。この生徒は開示得点と自己採点の違いに疑問を持ち抗議に至ったわけです。
さて、ここからが大切なのですが、残念ながら、このような抗議は滅多に起こりそうもないことです。その理由は、生徒は自己採点に自信を持てないからです(自分の答えを控えておらず、自己採点そのものができない生徒もたくさんいます)。
実は、この自己採点、すぐにできそうに見えますが、子どもにとっては意外に難しく、それに、そもそも軽視されがちです。
もちろん、この自己採点は採点ミスを見つけるためのものではありません。そうではなく、例えば、千葉県の高校入試のように日程が2日間になっている場合、初日の自己採点が重要になります。なぜなら、初日の成績如何で2日目の心構えが変わるからです。今年もこのおかげで2日目に発奮し合格した生徒がいました(大学入試では、共通テストの自己採点ができなければ、出願する大学を決めることすらできません)。
ただし、自己採点を正確に行うためには訓練が必要です。普段から答え合わせしっかりやるのもその 1 つです。
ただ、一番大切なのは試験を受けた後の処理です。5月からは模擬試験が始まります。他の学習塾ではほとんど行われていないようですが、伸栄学習会では、毎回、試験後に必ず、受験者全員に自己採点を課しています。模擬試験を絶好のトレーニングの機会と捉えているからです。
多くの生徒は、春から夏のころは、自己採点とテスト会社の採点を見比べて、その差の大きさに驚きます。ただ、秋から冬になると、その差はほとんどなくなります。
正確な自己採点ができることは学力の第一歩です。模擬試験の意義を再確認いただけたら幸いです。