講師 山内 雄司
来年4月から中学校の教科書が改訂されます。教科書は通常4年ごとに小改訂、12年ごとに大改訂が行われ、来年はその大改訂の年に当たります。
大改訂のたびに教科書は一新されます。ただ、今回の改訂はこれまでとは比較にならないほど大きな改訂となっており、十分な注意と覚悟が必要です。まず、記述量が大幅に増えます。つまり、学習内容が大幅に増えます。どの科目もそうなのですが、英語がその典型です。
英語についてはすでに小3(教科としては小5年)から学習が始まっています。中学の英語は小学校で学んだ内容を土台として、それに乗る形で始まります。その結果、今まで高校で学んだ内容が中学に入ってきます。例えば、「原形不定詞」「現在完了進行形」「仮定法」などが一例です。
そうなると当然、それ以外の内容は前倒しされます。中2で扱われていた「不定詞(名詞的用法)」や「動名詞」は中1で扱われるようになります。覚えるべき単語量も大幅に増えます。今までは3年間で1200語前後であったものが、2400語~2600語と2倍になります。単語の記憶は多くの子どもが苦手にしています。大きな負担になるのは間違いありません。
また、中1の4月はアルファベットや簡単な挨拶から始まりましたが、これが、いきなり「be動詞・一般動詞」から始まるようになります。しかも、「この内容は、当然小学校で身につけてきたよね」と言わんばかりのスタートとなります。今までの英語は「中1から心機一転、新たな気持ちでスタートするもの」であったのが、そうはいかなくなります。
「英語嫌いが生まれるのは中1の2学期」と言われてきました。しかし、「中1スタート同持」に嫌いになる子どもが激増するのは間違いありません。つまり、小学校の英語の基礎がない子どもは、中学に入ると何が何だかわからなくなってしまいます。
その上、文法や単語の負担も増します。しかし、それだけでは済みません。発表(プレゼンテーション)が重視され、日本語ではなく英語で学習をする訓練(CLILと呼ばれます)も折り込まれます。そして、中3の教科書の終盤には、やさしめの大学入試に出てくるような長文が登場します。
改めて新しい教科書を分析してみて感じるのは、十分な準備と覚悟ができていない子どもは振り落とされてしまう、という危機感です。いま「英語はまあまあ」と思っている生徒でも、新しい教科書では置いていかれてしまう恐れが十分にあります。
英語は一度遅れを取るとなかなか盛り返しにくい科目です。しかも、大学入試で最も重要な教科は英語です。理系も文系も英語を外すことができません。英語はますます「差のつく」教科になります。
新しい教科書は現段階では公表されていません。従って、マスコミなどではまだ教科書改訂による大変動が報道されていません。ただ、4月になって現実に分厚い教書に遭遇するのは子どもたちです。今から危機意識を持っていただきたいと願っています。
新年になりましたら教科書改訂について保護者会を開き、改めてご説明したいと考えております。