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講師 山内雄司

 塾と自転車は密接な関係にあります。

 

 自転車で通ってくる生徒は半数以上います。自転車も数がまとまればある程度の駐輪場のスペースが必要です。ちなみに、塾にとって駐輪場のスペースは欠かせないもので、このスペースのない塾は近隣とのトラブルが避けられないとも言われています。

 塾講師にとって生徒の自転車は気になるものです。雪が降ったら「駐輪場の雪かきをしないと」、真夏の暑い日には「自転車で走っていて熱中症にならないように」と反射的に考えてしまいます。

 生徒たちが使っている駐輪場は常にウオッチしています。どの自転車が誰のものかまでは把握していないのですが、置き方を見ると何となく生徒の顔が浮かびます。このきちんと壁際にまっすぐ置いているのは、いつも丁寧なノートを取っているAさん。カギをつけたまま入り口付近の真ん中に斜めに置いているのは、慌てて計算間違いをよくするB君………。そして、その想像はよく当たります。

 この春期講習中に、駐輪の仕方について生徒たちに話しをしました。より多くの生徒が自転車を置けるように気を遣って欲しいとか、近隣の方の迷惑にならないようにして欲しいとか、そういった基本的な注意が中心でした。ただ、その時に「駐輪と学力」の関係について話もしました。

 

 駐輪と学力の関係というと、大げさなと思われそうですが決してそんなことはありません。塾講師という職業柄と言われればそれまでですが、この2つは大きな関連があります。

 キチンと駐輪するには次のことが必要です。

 

 1、なるべく多くの自転車が止められて、かつ出し入れがしやすいようにするためには、自分の自転車をどこに置くのがベストか?

 2、先に自転車を置いた人が帰るとき、あるいは後から来る人が自転車を置くときに自分の自転車が邪魔にならないようにするにはどうしたらよいか? 強い風が吹いたときに転倒しないようにするにはどうしたらよいか?

 3、近隣の方や、近くを歩く人が駐輪場を見たときに不快に思わないようにするにはどうしたらよいか?

 上記の1は空間認知の力を、2は時間の経過を把握する力を、そして3は他人の心理を想像する力を必要とします。

 1はもちろん数学に不可欠な力です。2、3の力はどちらも国語の読解に必要ですが、社会でも求められています。地理・歴史を問わず因果関係の理解に使われます。これらの力が不足していると、ただの丸暗記で対応することになります。

 加えて、自転車をきちんと揃えておいて美観を保ったり、他の人の使い勝手を考えたりすることは、SDGsにも繋がります。環境に対して個人の行動がどう関わるのかを示すミニモデルとなり得ます。また、個人の行動で解決できないことに対してみんなでどう取り組めばいいのかを考える機会にもなります。

 SDGsは大改訂された教科書の大きなテーマのひとつです。欧米の学校教育ではかなり浸透しているようです。多くの教科で扱われていますので、早く目を向けて欲しい内容です。身近な駐輪と結び付けて考えるのもいいのではないかと思います。

 たかが駐輪、されど駐輪。このように考えると身近で絶好の教材かと思います。これを利用しない手は無いと考えている次第です。

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