2017年5月号……『見直しさえすれば………??』 塾長/青沼 隆
ウチの子、本当におっちょこちょいなんです。もっと,慎重にやりなさいっていつも言っているのですが……」。子どものテストについて話をしているときに、お母さまからよく耳にする言葉です。うっかりミスをしたために点数を取り損ねてしまい、母親としては残念な思いでいっぱいです。そのお気持ちはよく理解できます。確かにもっと慎重にやれば得点できたかもしれません。テスト中のちょっとした油断のために点数を落とすのは実に惜しいことです。
でも、果たして、子どもはテスト中に答案の見直しをキチンとできるのでしょうか。そもそも、見直しをする習慣がついているでしょうか。実は,大人であっても、見直しをキチンとできる人は少数派ではないかと思います。私自身の経験でも、資格試験のときに本当の見直しをしている受験生は案外少ないと感じています。例えば、マークシート方式の問題では、問題と答案がずれてしまい惨憺たる結果となる生徒がときおりいますが、大人であってもズレのチェックしている人はあまり見かけません。大人でもそうなのですから、子どもに大きな期待をするのはムリではないでしょうか。つまり、見直しは、「自然にできる」ものではなく、「訓練によってできるようになる」と考えるべきかと思います。
見直しはつらい作業です。問題を解くのは、ある種のパズル感覚もあって楽しさもあります(問題が解けないというつらさはありますが、それは別問題とします)。新しい問題を克服するのは気持ちのいいものです。しかし、見直しにはパズル感覚もありませんし、二度手間的な苦痛があります。それに、間違いなんかしないと高をくくっている子どももいますし、面倒をいやがる子どももいます。また、そもそも見直しの方法を知らない子も多いのです。ですから、冒頭の言葉のように、「テスト中に慎重になればうっかりミスはなくなる」というような話で解決することはありません。
見直しを徹底しようとすれば、それなりに訓練と習熟の時間が必要になります。さらに、やっかいな問題は、見直しの訓練を行うためにはテストの場面が必要であることです。通常の塾の授業では、この場面を作るのが困難です。このことを踏まえ、伸栄学習会では、夏期講習中に「テストの受け方を学ぶ講座」を20数年前から行ってきました。ただ、この限られた時間では、受講生全員に見直しを習熟させることに限界もありました。
このような背景から、今年の模擬試験からは、試験中の態度、自己採点の精緻化、見直しの徹底を指導することにしました。教科に対する理解度を深め、実力を養うこと(知識などをインプットすること)はもちろん大切なことです。ただ、それに留まらず、養った力をテストで存分に発揮する力(アウトプットする力)の養成にも目を向けていきたいと考えています。