2010年12月号……『英語の指導』 塾長/青沼 隆
小学校の学習指導要領が来春(H23)、中学校の同指導要領が再来春(H24)に改訂されます。指導要領の改訂により、学校で勉強する内容が増え、それとともに教科書が厚くなります。学校の授業時間は現状より約1割増えますが、学ぶ内容は3割程度増えます。従って、学習量が増えるだけではなく、学習密度も濃くなります。
子どもの負担は現状より重くなります。ただ、英語については単純な負担増とは違ったものになるのではないかと思います。お子様の教科書をご覧になったご両親様の中には、英語の教科書に驚きをお感じの方も多いのではないかと思います。昔の教科書と違って、ほとんどが会話調で組み立てられています。主語や動詞の省略された文も珍しくありません。一部の教師は、“Hey”“Uh……”“!”のちりばめられたこの教科書を“海外旅行英語”と揶揄しています。
この教科書とのつき合いも長くなりました。この間、いろいろな試みをしましたが、これで体系的に文法を指導するのは不可能です。それに、そもそも、この教科書は文法ではなく、「使える英語」を養うのを目的で作られています。従って、ご両親さまが使った教科書とは全く異なったコンセプトで作られています。「使える英語」という言葉には快い響きがあります。ただし、現実問題として、語彙や文法を知らなければ、英語が使えるようにはなりません。
こんな背景もあり、現在、多くの中学では教科書以外の教材が授業で使われているようです。定期試験の問題を見ると、教科書以外の内容が出題されているケースがよくあります。以前は、中学の定期試験の問題はほとんど教科書から出題されていました。ですから、これは大きな変化です。学校の現場でも「教科書離れ」が確実に起きています。
伸栄学習会でも同様です。体系的な文法知識や語彙力を養うために、教科書以外の教材を授業で使っています。また、最近、独自の教材(私たちは「マスター」と呼んでいます)を子どもたちに配布しました。この「マスター」は中学及び一部高校で習う文法を簡潔にまとめた教材で、子どもが「わからなくなった」ときに自分の力で学べるように作られています。
中学の学習指導要領が改訂されるまで、残り1年半あります。恐らく要領が改訂されれば、英語の教科書も従来の姿に戻されるだろうと思います。それまでの間、子どもたちの真の英語力を養成するために、教科書だけにとらわれない指導を進めていきたいと考えています。