2012年夏-1号……『自信』 塾長/青沼 隆
「自信を持って行動しなさい」「自信を持って×××に臨みなさい」………昔、こんな言葉を先生や先輩・上司から言われた記憶があります。励ましだったのでしょうが、同時に「そんなことを言われたって」という気持ちもありました。自信を持てと人から言われたくらいで自信が持てたら苦労しないよ、という気持ちがどこかにあったのではないかと思います。
自信とは、辞書には「自分で自分の能力や価値などを信じること。自分の考え方や行動が正しいと信じて疑わないこと。」とあります。自信は何かを成し遂げる際に必要なものですが、他人からと言われて、「はい、持てました」と言えるようなものではありません。
ただ、そうは言っても、塾で長い間教師をやって来た中、子どもたちが試験に臨むに当たって、自信のあるなしが大きな差になって現れることを実感してきました。学校の定期試験や入学試験では自信を持っている方が有利です。試験場では、自信のある子の方が余裕を持って取り組めます。ですから、万一、想定外の問題に出会っても柔軟な対応ができます。自信がない子はこんなとき、萎縮してしいます。
さらに、重要なのは、自信のない子はケアレスミスを犯しがちということです。圧迫感や不安感それに心理的な萎縮がケアレスミスを呼ぶのだと思います。ケアレスミスは運が悪いから起きるのではありません。ケアレスミスを起こす子どもはいつも起こします。運の悪さが原因なら、同じ子どもに同じことは起きないはずです。ミスが起きるのはそれなりの原因が必ずあります。
自信の有無は試験においてとても重要な要素です。「ない」より「ある」方が有利です。ですから、塾の教師としては、試験の前、特に大きな試験の前に子どもに自信を持たせることも大切だと認識しています。
一方、自信を持てるかどうかは、子どもの性格によるところも大です。客観的に見れば自信を持ってよいはずなのに慎重な子もいます。反対に割とカンタンに自信を持つ子もいます。しかし、これも本当の自信というより自己過信に近く、これはこれで、大きな問題を抱えます。自信というのはやっかいなものです。
講師の働きかけは大切です。ただ、総じて言えることは、残念ながら、それで大きな作用を及ぼすことはあまりありません。自信のない子は、いくら励ましても自己評価が高まることはありません。反対に自信過剰な子には、悲惨な結果をみて自分の力を再評価してもらうしかありません。
子どもたちからは、時折、ケアレスミスをなくす方法や試験で自分の力を発揮する方法について質問を受けます。手っ取り早い方法があればよいのですが、私の知る限り「これ」という方法を知りません。ですから、月並みですが、「勉強のやり方」を答えることにしています。つまり、試験でよい結果を得るには、わからなかった問題やできなかった問題をできるようにすること。そのために、できるようになるまでくり返すこと。そして仕上げは、類似問題で本当にできるかどうか確認すること。
この勉強のサイクルで力がつきます。自分で「できる」という確信も持てます。ですから自信も持てます。試験の結果も満足いくことと思います。だから、さらに自信もつきます………やはり、「やるべきことをやる」しか方法はないと思っています。