2003年10月号……『絶対評価』 塾長/青沼 隆
すでにご承知の通り、一昨年(2002年度)より中学校の成績評価が、従来の「相対評価」から「絶対評価」に変わりました。「相対評価」とは学校の成績順に、上位からそれぞれ、7%に「5」、24%に「4」、38%に「3」………が付けられる評価方法です。ですから、順位で自動的に評価が決まる仕組みとも言えます。それに対して「絶対評価」にはこの縛りがありません。「5」が7%より多くても少なくても構いません。これらの判断は教師に任されていて、極端なことを言えば、生徒全員に「5」を付けることも「1」を付けることもきるわけです。それぞれの評価方法には一長一短があり、どちらがより良いかを議論すれば果てしないものになるだろうと思います。ただ、ここで問題なのは、中学校の成績評価が高校入試の肩代わりしていて、評価を巡って公平性に問題があることです。
私立高校の推薦入試は、ほとんどの場合、中学3年の学校の成績で合否が決まります。例えば、東京学館浦安高校では、5教科(国数英理社)「17」以上の成績を修めれば推薦入試に合格できます。他の高校でも「17」という数値はともかく、同じ合否システムが取られています。もちろん各校とも形式的な入学試験を行いますが、実質的にはこの結果は合否に影響を与えません。学校の成績がすべてです。県立高校の特色化選抜も一部を除き事情はほぼ同様です。県立の一般入試は学校の成績だけでは合否が決まりませんが、入学試験5教科の点数にこの学校の成績が加算されて合否が決まります。従って、程度の差こそあれ、中学校の成績は高校入試の合否に直接的な影響を与えているわけです。
問題はこの公平性です。どの中学でも同じ基準で成績が付けられるのならこれはこれで整合性があります。しかし、下表をご覧下さい。これは、昨年度の中学3年生2学期の学校別の成績評価です。グラフの一番上は「相対評価」によるものです。2002年度以前はこの割合で成績が付けられていました。しかし、今では千葉全体で見ると、何と19%の生徒に「5」が、31%の生徒に「4」が付けられています。「5」と「4」で全体の半分に当たるわけです。逆に言うと、「3」の生徒は全体の平均以下ということになります。さらに問題はこれを各学校別に見たときです。浦安中と堀江中の成績評価の厳しさは突出しています。評価の平均値で見ますと
日の出=3.72 美浜=3.61 富岡=3.53 入船=3.38
見明川=3.68 堀江=3.19 浦安=3.28
となっており、格差は歴然としています。ちなみに、千葉県には384校の中学があり全体の平均は3.49となっています。さらに、この評価の平均値を中学校順にランキングしてみますと、堀江中は厳しさで384校中7位、浦安中は32位となっています。一方で、千葉県で最も甘い評価を付けているのは白井中(白井市)です。下欄グラフの一番下にこれを表示しました。何と「5」が37%に、「4」が43%の生徒に付けられていて、「5」と「4」で全体の8割を占めています。いかに評価が「でたらめ」であるかがご理解いただけるかと思います。
高校入試の合否判定に当たってもは、評価の「甘い」「辛い」に拘わらず、数値は数値としてそのまま取り扱われます。白井中の「5」が「4」にとか、堀江中の「3」が「4」になどという操作は一切されません。従って当然のことながら、白井中の生徒は合格しやすく、堀江中や浦安中は合格しにくくなります。絶対評価の善し悪しそのものの議論はさておき、高校入試における不公平は早急に解消されるべきだと考えます。
中学校の評定分布 (平成14年2学期)