2014年6月号……『理解力・読解力を高める方法』 塾長/青沼 隆
2016年春に県立東葛飾高校に附属中学が誕生します。県内では千葉中・稲毛中に続き3校目の公立中学一貫校となります。東葛飾高校は千葉高・船橋高と並んで公立御三家の一校でもあり、多くの受験生を集めるのは確実かと思います。柏にある学校なので浦安・行徳の子どもにとっては縁遠い存在ですが、久しぶりの公立中高一貫の誕生でもあり、いろいろな話題が飛び交っています。
私立中学の入試問題と公立中高一貫校の入試問題は大きく異なります。公立の中高一貫校では、文部科学省の指導もあり「学力試験」を行わないことになっています。そのため入学者選抜も「入学試験」ではなく「適性検査」と呼ばれます。科目の枠を取り払った総合問題として、知識や解法ではなく思考力や表現力などが問われる内容となっています。適性検査の問題は決して易しくありません。合格するには国算社理の基礎学力に加えて、かなり高度な理解力や表現力が要求されます。
ところで、理解力や表現力の向上は、公立中高一貫を受験しない子どもにとっても大切な課題です。言うまでもなく、これらはすべての教科の土台となります。読解力がなければ、試験の問題を正しく読み取ることができませんし、日頃の勉強を効果的に進めることができません。将来、社会人となったときには、関係者とのコミュニケーションにも支障が生じます。
理解力や読解力を育てる方法の1つとして、家庭で簡単にできるのが新聞の活用です。とりわけ、朝刊のコラム(朝日新聞「天声人語」、読売新聞「編集手帳」、日本経済新聞「春秋」など)の利用をお勧めします。ご承知の通りコラムには、その時々の時事的な内容が織り込められており、文章も平易で文字数も一定しています。
一番のお勧めは、文章をそのまま書き写すことです。教育の専門用語では「視写」といいます。原稿用紙を使っても良いと思いますが、記録に残すという意味では、マス目のノートがベストです。よく、「ただ写すだけでは物足りないのでは?」とか、「文章を要約したり、自分の意見を書いたりしなければ勉強にならないのでは?」と反論されます。もちろん、要約したりや意見を書いたりすることは結構なことです。ただし、その分ハードルが高くなり継続が難しくなります。
人によってさまざまかと思いますが、子どもがはじめてコラムを「視写」したとき、30分以上かかることも珍しくありません。これが、1ヶ月・2ヶ月と継続していくと時間が半分以下に短縮します。文字や単語ではなく、文脈を捉えられるようになったからです。
視写は作文力向上や小論文対策としても極めて効果的です。作文や小論文を書くにはいくつかのハードルがあります。多くの子どもにとって、最初にあるもっとも高いハードルが、そもそも文章を「書く」ことです。視写によりこのハードルがクリアできます。また、書くために必要な「知識」もコラムを通じて修得することできます。
視写は算数や英語と違って「わからない」「できない」ということはありません。答え合わせも不要ですし、先生もいりません。是非、今日からでもご家庭で取り組みをされることをお勧めします。