2014年4月号……『水彩抽象画から得られること』 講師/山内 雄司
4月19日(土)に、猫実教室で「感性を養う 水彩画講座」が行われます。この講座では「抽象画」の説明と制作をする予定です。
習いごとや部活でスポーツや音楽を日常的に練習する生徒は多いですが、それに比べると日頃から美術に触れている生徒は極端に少ないようです。「絵は苦手だから」といって、学校の課題が出たときだけ仕方なく描くという話もよく聞きます。
しかし、そういう子どもでも「抽象画」に触れてみると、ずいぶん熱心に取り組み、家でも自主的に描くようになったというケースが多くあります。
「抽象画」は大人でも取っつきにくいという印象を持たれているようですが、そんなことはありません。「具象画」よりも制作しやすく、その恩恵も受けやすいものです。ぜひ、今回の講座を体験していただければと思います。
「感性」を見直すにはいろいろな方法がありますが、そのきっかけとして「抽象画」は非常に実行しやすく、問題の焦点を把握しやすいのではないかと思っています。 子どもはとても自由な発想をします。遊びのなかではその想像力と表現力が実に生き生きと躍動します(コンピューターゲームなどではその力が製作者の意図のうちに制限されてしまいますが…)。
ところが、妙なところで「簡単な理屈・明確な目的」を求めます。「これは何を意味しているの?」「何のためにこんなことをするの?」「何のために勉強しなきゃいけないの?」遊ぶときにはそんなことは微塵も考えないのに、そこから一歩外に出ると「意味と理屈」にがんじがらめとなってしまいます。
「抽象画」には、「人間」や「イヌ」など、すぐ記号化できるものは何も描かれていません。ただ「色」があり「形」があるだけです。それは紛れもない「表現」です。絵を見れば「感性」が動きます。
しかし、「意味と理屈」がそこにフタをしてしまうのです。「抽象画」の体験は、その「感性の動きにフタをしてしまうという事実」に気づかせてくれます。そして、「簡単な理屈・明確な目的」以外にも注目するべき世界があると気づき、そのドアを開ける手がかりになってくれます。
学科の指導に限って言えば、「感性」を語っても仕方がない部分があります。解法の手順を踏み、必要とされるトレーニングを行っていれば、入試や定期テストのレベルで不足することはまずありません。
しかし、それでも「感性」の育成・見直しはとても重要です。色彩や形と向き合って、自分の心がどう揺れていくのかを見つめる、そんな時間を取り入れることは、必ず子どもたちの生活を豊かにするものと確信しております。
(今月も『感性を養う 水彩画講座」を担当する山内が執筆しました)