2018年5月号……『教育費破産』 講師/山内 雄司
このところ、ニュースなどでも「教育費破産」の話をよく聞きます。深刻な問題だと思っていたのですが、先日、大学の情報に詳しい専門家の方から改めてこれについての話を聞く機会があり、ことの重大さを再認識しました。
「教育費破産」とは、簡単に言えば、子どもの教育費の負担が大きすぎて家計を大きく圧迫し、生活が困窮するほどの事態に陥ってしまうことです。その背景には、高校卒業後8割以上が大学や専門学校などに進学するのが当たり前という風潮があります。かつては、大卒であれば高収入が保証されエリート扱いされました。また、リストラされる社員は高卒が多く、その原因は学歴であると考える風潮もありました。そのイメージがあるため、経済的に無理をしてでも大学に進まなければならないという決断がされがちです。「エリートになるため」というよりは、「安定した生活を求めるため」に大学進学を考えるというのが、現在では大多数のようです。
また、現在、私立大学の約4割が定員割れの状態で、経済的な面だけをクリアすれば、希望者はほとんど大学生になれる(大学を選ばなければ)ということも大きく影響しています。そのうえ、2019年には専門職大学が開校予定であり、この傾向はますます強まりそうです。
ただ、ご存知の通り、今は大卒だからという理由で安定した生活を手にできたり、高収入が約束されたりするという時代ではありません。奨学金を借りてみたものの、卒業後に返済できず、困っている人も大勢います。
国公立大学に進めば、もちろん私立大学よりも学費は安くなります。ですから、国公立大学に何としても進学するというのは正解です。ただ、国公立大学は難度が高いところに限られるため、現実として大多数の子どもはお金のかかる私立大学に進むことになります。私立大学では文系の法学部・政治学部であっても平均4,298,709円ほどかかり、さらに高騰する傾向にあります。「昼間は働いて学費を稼ぎ、夜に勉強する」という夜間学部も廃止が続いています。奨学金はどうかというと、先に述べたように、卒業後に返済に追われてしまうケースが多くあります。さらに、一人暮らしもするのであれば、さらに経費はかさみます。
これらを総合化すると、「この悪循環は、国の制度で何とかするしかない」というのが正解かもしれません。
しかしそれはそれとして、生徒一人ひとりとそれぞれの保護者様がこの局面を切り抜けていくにはどうしたらよいでしょうか。進路をすべて「収入の計算」で考える必要はありませんが、重要なことはやはり大学までを視野に入れた「ヴィジョン」を持つことだと思います。そして、そのために、大切なことが2つあるように思えます。
ひとつめ。いわゆる「元の取れる大学」に進むことです。そのためには、小中学生の時から「勉強をしっかり続けられる姿勢」を養うことです。勉強を続ける姿勢を養うには、それ相応の時間と志が必要です。高3になって急に思い立っても間に合うものではありません。
ふたつめ。貸与型ではなく、返済の必要のない給付型の奨学金を狙うことです。この奨学金は当然ながら成績上位者を対象としています。これも、思い立ってから急に成績上位者にはなれません。これも中学のうちに築いた「勉強のしかた」を高校で駆使して達成されるものです。
何もかもお金に換算することには抵抗がありますし、決して「お金がすべて」ではありません。しかし、ある側面から見ると「成績=お金」であるのも事実です。いや、むしろ、こういうモチベーションを持って勉強に取り組むたくましさを持つことも必要かと考えます。