2001年8月号……『教育の規制緩和』 塾長/青沼 隆
教育を取り巻く動きが急を告げてきました。終戦後50年以上が経過して、学校のあり方など、教育システム全般が制度疲労を起こしていることは明らかです。これから、数年以内に、一昔前には考えられなかった動きが出てくるものと思います。現に、先の国会では教育改革関連3法案が可決され、次の施策が実施されることになりました。
・大学進学の「飛び級」がすべての学科で認められるようなった
・基本的教科の20人授業が実施できるようなった
・いじめや授業妨害など問題を起こす子どもに対して、出席停止を命じることがで きるよ うになった
・自然体験活動、社会奉仕体験活動が義務づけられた
・指導が不適切な教員を他の職に異動させられるようなった
これらは、いずれも「教育改革国民会議」の17項目の答申を受けたもので、残りの答申についても順次法制化に向けて検討されることになっています。
その中で、現在、話題を呼んでいるものとして「コミュニティスクール」構想があります。コミュニティスクールとは、誰でも自由に作れる公立の小中学校のことを指します。アメリカで話題を呼んでいる「チャータースクール」の日本版とも言われています。もちろん、現在、日本では個人であれ団体であれ公立の小中学校を作ることはできません。通学区域は緩和される方向に向かっていますが、原則として生徒・保護者は通う学校を選ぶ自由もありません。これを抜本的に変えて、ある一定の要件さえ満たせば、誰でも自由に公立の小中学校を作り、生徒募集ができるようになるのが「コミュニティスクール」構想です。
ですから、ある教育理念のもとに親たちが団結すれば、その親たちが公立学校(コミュニティスクール)を作れるようになれます。あるいは、塾がコミュニティスクールに生まれ変わる可能性もあります。もちろん、公立ですので経費一切は公費が負担します。現時点では、文部科学省は、この構想に対してどのように取り組んだらよいのか考えあぐねている状態だそうです。ただ、いわゆるエリート校は不可、できれば、既存の公立学校では対処できない子ども(不登校や障害児など)を対象として欲しいとの意向を示しているそうです。この先どうなるのかわかりませんが、すでに、民主党ではコミュニティスクール法案の準備に取りかかっているそうですし、自民党でも検討に着手したそうです。
コミュニティスクールよりまだ先の問題ですが、「バウチャー制度」も議論されるようになりました。「バウチャー」とは、子どもを持つ親に対して配布される一種の“金券”です。この金券は教育のためにしか使えませんが、その範囲内ならどこでも自由にその金券(バウチャー)を使うことができます。現在、国や地方公共団体では公立学校の運営費や私立の助成金に税金を投入していますが、そのお金をゼロにして、代わりにこのお金を直接親に交付するのがバウチャーです。ですから、公立も有料化されます。この結果、親は公立学校や私立学校、あるいは塾をも自由に選択して、その支払いにバウチャーを使うことになります。もし、こうなれば、公立も私立も塾もすべて横一線で競争することになります。従来のように、「公立は安いから」という理屈は成り立たなくなります。
コミュニティスクールやバウチャーがどうなるかはわかりません。ただ、これまで全く別物とされてきた公立や私立の垣根、あるいは、学校と塾の垣根も低くなると思います。
教育の世界でも変化のスピードは加速しています。当塾としても、これまでの“常識”にとらわれずに教育内容の革新をはかっていく所存です。