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2007年3月号……『成績が下がる!?』 塾長/青沼 隆

評価のカラクリ

中学生の成績が下がりそうです。
3月下旬の終了式にもらう通知表を見て、ガッカリする人が出てしまうのではないかと心配しています。

ただ、安心して下さい。勉強ができなくなったわけではありません。通知表の評価システムが変わるのが原因です。

今から5年前の2002年度、中学校の成績評価はそれまでの相対評価から絶対評価に変わりました。相対評価というのは、学年全体の中で「5」が7%、「4」が24%、「3」が38%………と、それぞれの点数に枠がはめられている評価です。両親さまの子どもの時代の評価です。それに対して、「絶対評価」というのは「5」や「4」などに枠の縛りはありません。極端なことを言えば、全員が「5」や「4」であっても構わないわけです。

この結果、どうなったかというと、成績のインフレが起こりました。評価が甘くなり、従来なら「3」の生徒が「4」に、場合によっては「5」がつくようになりました。相対評価なら、どの中学も平均値は「3」になります。それが、絶対評価に変わった結果、千葉県全体の平均値は「3.5」になりました。つまり、9教科全体では、4点から5点が労せずして上がったことになるのです。

不平等な内申書

全員の成績が平等に上がるのなら、それはそれでよいのかもしれません。しかし、そうはならずに、中学によって「甘い・辛い」の不平等が生じてしまいました。千葉県教育委員会によると、一番甘い中学の平均点は「4.1」、一番辛い中学の平均点は「3.1」とのことです。

平均が「4.1」ということは、学年順位で真ん中の人が、オール4に5が混ざった成績を取っているということになります。もちろん、相対評価ならば、その子の成績はオール3になります。かなり“異常”な評価だと言えます。

もっと、深刻な問題があります。それは、高校入試では「内申書」つまり、学校の成績が重要な役割を演じるということです。例えば、県立高校の入試では、内申点と入試得点の合計で合格不合格が決まります。ということは、「甘い」中学からはたくさんの合格者が出て、「辛い」中学からは合格者が出ないということになります。

これは、高校側にとっても大きな問題です。高校としては少しでも学力の高い生徒を取りたいと思っています。しかし、「内申書」の数値がこのようになっているために、評価の甘い中学からはたくさんの合格者が出ていしまうという矛盾が生じるのです。県立高校の関係者は、「内申書はでたらめ」と口をそろえて主張していました。

入試制度が変わる

さて、この評価の矛盾ですが、2008年度入試(今の中2の入試)から改善されることになりました。具体的には 「X+95―m」という算式が使われることになったのです。Xは、その子の3年間の成績の合計。mはその子が通う中学の評定平均値を意味します。

甘い評価の中学ではmの値が大きくなります。ですから、mがが大きい分だけ、全体の「X+95―m」の数値が低くなるわけです。その反対に、評価の辛い中学のmの値は小さくなります。ですから、その結果、「X+95―m」の数値は大きくなります。一応、これで、不平等は解消されることになりました。

ところが、これだけでは済まない問題が起きそうなのです。それは、評価の甘い中学からは、県船橋や薬園台といったトップ高校には合格できなくなりそうなのです。

どういうことかというと、上記のmの数値を出してみるとわかります。

平均「4.1」の中学では、mの値は、4.1×9教科×3年間=111となります。一方、「3.1」の中学では、3.1×9教科×3年間=84となります。111と
84を比較すると27点の差が出ます。

県船橋を受験する子どもは、ほとんどがオール5に近い成績を取っています。ところが、同じオール5でも、甘い中学の子どもは、辛い中学の子どもに27点の差が付けられてしまいます。

一方、これらの高校の入試の合否の分かれ目は、450点前後(各教科だいたい90点)です。従って、評価の辛い中学の受験生は450点で合格できるところ、評価の甘い中学の受験生は472が必要になります。500点満点から逆算すると、450点なら50点のミスが許されます。ところが、472なら28点のミスしか許されません。この差は決定的です。

だから、「評価の甘い中学からはトップ高校に受からなくなる」わけです。従って、これを避けるにはmの値を小さくする、即ち、評価を厳しくするか方法はありません。
冒頭の「成績が下がる」というカラクリはここにあります。

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