2009年1月号……『学習指導要領の改訂』 塾長/青沼 隆
この4月から小中学生の勉強内容が増えます。学習指導要領が改訂され、「移行措置」が始まるからです。「移行措置」とは、学習指導要領の完全実施に先立ち、各学年で学習内容を順次追加していくものです。学習指導要領の完全実施は、小学校が2011年度、中学校が2012年度です。ただし、その準備として一部の単元について、学ぶ内容を増やしていこうとするのが、この「移行措置」であるわけです。
従って、この4月からは、学校で、教科書に書かれていない内容も学ぶことになります。これらの単元の学習に当たっては、補助教材などが配布されます。過去の日本の教育をふり返りますと、ご両親さま方の小中学時代から、一貫して学習内容は減らされてきました。その意味で、今回の改訂は「振り子時計が逆に振れた」ことになります。
移行措置による学習増は理科・数学(算数)が中心になります。中学の理科では、圧力・仕事とエネルギー・イオン・月の運動などが復活します。算数・数学では、学習単元が全般的に前の学年に移される(例えば従来小5で学んでいたものが小4に移される)とともに、資料の活用(ヒストグラムや代表値)・相似の面積比と体積比などが復活します。これらの単元は、いずれも前回の学習指導要領の改訂(いわゆる「ゆとり教育」)で消えたものですが、多くの子どもを悩ませた単元です。
大ざっぱな言い方をすれば、「難しい単元」が復活したと言えます。
学習指導要領の改訂、とりわけこの4月から始まる移行措置の影響はいろいろ考えられます。数十年一貫して削減されてきた学習内容が、一転して増加に向かい、ほとんどの教師は「学習内容の増加」という経験をしていません。従って、さまざまな混乱が危惧されるわけですが、とりわけ次の3点がポイントとなるのではないかと思われます。
①学校の授業が終わらない………学校の授業時間は実質的に増えません。一方、学ぶ内容は増えます。これまでも学校の授業には時間的な余裕がありませんでした。従って、この4月からはさらに厳しくなります。速く進めれば落ちこぼれが増えるし、ゆっくり進めれば全単元が終わらないという問題が起こる可能性があります。
②若い先生に指導経験がない………理数科目を中心に多くの単元が「復活」しますが、若い先生(30代前半)にはこれらの単元の指導経験がありません。当初は指導に戸惑いが生じる可能性があります。
③大学生は学んでいない………学校とは直接関係ありませんが、多くの塾では大学生が指導しています。ただ、今の大学生は「ゆとり教育」で育ったために、この春から復活する単元を学校で学んでいません。従って、彼ら彼女らにとっては、自分自身も学んだこともない単元を指導しなければならない立場となります。