2017年1月号……『国語の学習』 塾長/青沼 隆
国語は英語・数学と並んで主要3教科と呼ばれている。国語はすべての教科の中心だが、教科を自由に選べる塾の場合、英語・数学とくらべて受講生が少ないのが実情のようだ。英語や数学のように、わからなくなってしまって、自分ではどうにもならないという実感を持てないのが原因だろうと思う。伸栄学習会もその例外ではなく、国語の受講生が少なく、とても残念なことだと思っている。
実は国語は他の教科にはない特殊な性格を持っている。
それは、学校の成績がよいからといって、必ずしも、国語が得意だとは限らない、もっと言えば、学校の成績がよいからといって、模擬試験の偏差値が高い(入学試験で高得点を取れる)とは限らないということだ。保護者の方も、「ウチの子は国語の成績がよいので、入試も心配していない」と仰おっしゃる方がいるが、これは注意した方がよいと思う。
他の教科ではこんなことはあまりない。つまり、学校の成績がよければ模擬試験の偏差値も高い(逆に言えば学校の成績が悪ければ、偏差値も低い)ことが多い。なぜ、国語だけがこのようになるのか、理由は単純だ。それは、学校のテストはほとんどの場合、教科書に載っている限られた題材で作られているからだ。題材が限られるから、試験勉強をマジメにする子どもにとって、高得点を取ることはさほど難しくない。1つの題材で作られる問題には限りがある。しかも、授業をキチンと聞いていれば、先生がどんな問題を出題するかもおおよそ見当がつく。
当学習会で行っている国語の授業もそれを踏まえて指導している。塾だから問題を準備することは難しくない。試験範囲になっている題材を分析して、この題材で作られそうな問題をほぼ網羅して、それを子どもにやらせている。だから、学校のテストでわりあい簡単に高得点を取らせることができる。
ただ、模擬試験や入学試験はそうはいかない。何が出るかを予想することは不可能に近い。だから、読解力がそのまま問われることになる。そして、やっかいなことに読解力をつけるのは、英語や数学よりはるかに難しい。ある種のテクニックがないわけではないが、それでも、かなりの時間がかかる。さらに、経験的には、問題をいくら解かせても読解力が身につくとは限らない。読解力をつけるには、それ以前に、ある種の言語感覚というのが必要になる。例えが適切かどうかわからないが、数学の文章問題を解くには計算力が必要なのと似ている。
従って、当学習会では、保護者の方に、「学校の国語の成績を上げるのは難しくありませんが、偏差値を上げるには時間がかかります」と言うことにしている。この言語感覚や読解力を身につけるのは簡単ではない。ただ、いろいろ方法がある中で、一番の早道は「速読・速聴」である。つまり、大量の日本語を体に入れて、血肉化するのが最も効率的といえる。また、多くの生徒が苦手にしている「作文(読書記録)」も、毎週定量を書くことも効果がある。だから、中学生以上の場合、国語の受講者には、授業時間内に「速読・速聴」の演習を取り入れることが多い。
考えてみれば、数学も理科も(そして英語も)、試験の問題は日本語で書かれている。日本語力がなければ、他の教科に影響が及ぶのは当然。その意味でも、一人でも多くの生徒に、国語への取り組み方を見直して欲しいと願っている。