2013年8月号……『受験学力の先』 塾長/青沼 隆
先日、京都大学のある准教授による、同大学の学生生活や就職に関する実態調査の結果を聞く機会がありました。
調査によると、京大生の学習状況は4タイプに分かれ、それぞれの割合は次の通りになったとのことです。
・タイプA………大学の授業には出るが自分では勉強しない (30.9%)
・タイプB………大学の授業にも出ないし自分でも勉強しない (33.3%)
・タイプC………大学の授業にも出るし自分でも勉強する (16.0%)
・タイプD………大学の授業には出ないが自分では勉強する (19.8%)
京都大学は言うまでもなく、東京大学と並んで最も優秀な学生が通う大学といわれています。そんな学生であっても自分で勉強しようとしない学生(タイプAとタイプB)が64.2%、つまり同大学の学生全体の2/3を占めているとのことです。
一方、同大学の就職状況を見ると、大学4年生の11月時点で次の通りとのことです。(調査対象は就職希望者で大学院などの進学者は対象外)
・内定を取り就職活動を終了した (66.0%)
・現在も就職活動中 ( 7.5%)
・就職活動を断念した、中止した、延期した (26.5%)
4年の11月といえば就職活動の終盤期です。すでに企業は内定通知を出し終えています。この時期に至っても1/3の学生は内定を得ていません。就職エリートといわれる京大生であってもこのような厳しい現実にあるようです。
よく大学生は勉強しなくなった、卒業後のキャリア意識が低くなったと言われます。この現実はわが国を代表する京都大学の学生にも共通しているようです。
調査を担当した准教授は、
“「京大生は………だ」と批判的に言うと、多くの高校教員は、「京大生でダメならいったいどうしたらいいのだ?」と嘆く。でも、受験学力だけでは、大学、社会での力強い学びと成長を期待することができない”
と語っています。
確かにその通りかと思います。受験学力は受験教科の知識・理解が評価の対象であり、コミュニケーション力や倫理観などを評価するものでありません。将来の成長を保証するものでもありません。ただ、そうは言いつつも、受験学力を向上させるには、自己管理力・情報リテラシー・論理的思考力などさまざまな能力向上が求められます。これらは勉強だけではなく実社会で仕事を進めていく上で必須の能力です。従って「受験学力なんか社会では無用だ」というのも当てはまらないと思います。
詰まるところは受験学力は大切、ただ、それだけでは不足。受験学力に加えて、生涯を通じて自ら学ぶ力、将来に対する高い目標意識、コミュニケーションを含む対人関係力なども必要というのが正解に近いような気がします。
学習塾は一般的には受験学力を養うところ、と位置づけられています。それはそれで正しいと思います。ただ、そろそろ、受験学力以外にも目を見開かなければならないと認識しています。