2013年3月号……『公立入試』 塾長/青沼 隆
学力重視?
公立高校の入試が終わりました。現行制度(前期選抜・後期選抜)になって早3年が経過して、制度としてはすでに定着したかと思います。ただ、その具体的内容となると、未だに生徒や保護者の方に浸透していないように思えます。
先日、恒例の新中3の生徒・保護者対象の「高校入試制度説明会」を開催しましたが、その中で多くの方が、入試制度について知識を求められていることを感じました。入試制度を巡ってはさまざまなウワサが飛び交っているようですが、その中にはアヤシイものもあります。例えば、「県立入試では前期選抜・後期選抜ともすべての高校で“学力重視”の選抜が行われている」というのがその典型ではないかと思います。
確かに現行制度になって、すべての高校で学力試験が課せられようになりました。それ以前の入試制度であった特色化選抜(第1回目の入試)では一部の高校しか学力試験が課せられていませんでした。そんな背景もあってか、制度変更当時、「千葉県入試でも学力重視に」ということが盛んに言われました。
ただ、千葉県教育委員会はその時から、「前期選抜は特色化選抜の精神を引き継ぐ」と言っており、その姿勢は現在でも変えていません。特色化選抜とは、各高校がそれぞれ特色ある選抜を行う入試であり、誤解を恐れずに言えば、学力にとらわれずに、各校のお眼鏡にかなった生徒を選抜するという入試です。従って、合否に当たっては、面接や作文、さらには中学時代の活動など、調査書(内申書)も重視されます。現状の前期選抜においても、1日目は学力選抜、2日目は各高校指定の入試(面接・作文・自己表現など)が行われるのもそのためです。
2日目入試
この2日目の入試は1日目の学力試験とくらべて軽視されがちですが、高校によってはかなりのウエイトが置かれているのも事実です。例えば、本年の入試では、市川工業が、2日目の面接だけで定員の2割を合格させる、つまりこの2割については学力試験の結果を考慮しないというものもありした。
前期選抜の合否は、①1日目の学力試験(500点)、②3年間の内申点(135点)、③2日目の試験、④内申書に書かれた記載事項の合計で決まるというのが原則です。そして、そのウエイトは各高校の判断に任されています。ただ、ここで問題なのは、多くの高校は③④について具体的な点数や評価基準を公表していないことです。従って、受験生にとっては、なぜ自分が受かったのか、なぜ自分が落ちたのか判然としないというのも事実です。
ただ、これまでの入試結果から予測すると、偏差値の高い上位校では③④のウエイトが低い(もしくは考慮されない)、逆に下位校では③④のウエイトが高いようです。事実、他塾と協力してデータを集めて分析すると、上位校では①②の合算値でほぼボーダーラインを特定することができます。
入試一本化
さて、現行制度ですが、さまざまな入試関係者の話を総合すると、そろそろ終わりに差しかかってきているようです。ちなみに、埼玉・茨城・神奈川・栃木の各県では、前期・後期制度が廃止され入試が一本化されています。首都圏で2回の入試が行われているのは、千葉と東京だけになりました。
受験生や保護者の方に、入試は1回が良いか2回が良いかアンケートを取ると、必ず、「2回が良い」という結果になるそうです。受験生の心理としてはよく理解できるところです。チャンスは1回より2回が良いのはある意味で当然かと思います。
しかし、入試の倍率を考えると必ずしも2回が良いとは限りません。例えば、
100名募集する高校があって120名の受験生が応募したとします。もし、入試が1回ならば倍率は1.2倍となります(応募120名÷定員100名=1.2)。一方、これが現行の入試と同じように「前期で60名」「後期で40名」でしたらどうでしょうか。前期選抜の倍率は2倍となります(応募120÷定員60=2)。また、後期選抜の倍率は1.5倍(応募60÷定員40=1.5、応募者は当初の120名から前期で合格した60名を差し引いた60名。定員は100名から前期で合格した60名を差し引いた40名)となります。チャンスが増えた分だけ、倍率が上がることになります。
2回は2回なりのデメリットもあります。いずれにしても、遅かれ早かれ千葉の公立入試も一本化されそうです。さて、その時期ですが、現状の小6(新中1)からというのが、多くの専門家の予測するところのようです。本年12月ごろまでには着地点が見えてきそうです。新しい情報を入手しましたらご報告いたします。