2015年6月号……『タブレット』 塾長/青沼 隆
教育を取り巻く環境が大きく変わりつつあります。インターネットを使ったeラーニング、反転授業、各種の映像教材などは珍しいものではなくなりました。先日、東京ビッグサイトで開かれた「教育ITソリューションEXPO」は連日押すな押すなの大盛況だったようです。一昔前まで、教育現場は紙とエンピツがあればそれで十分、技術進歩から最も縁遠い世界といわれていました。その状況が大きく変わりつつあるようです。
伸栄学習会も積極的に教育機器の導入を図ってきました。塾を始めた昭和55年(1980年)、当時まだあまり普及していなかったパソコンを導入しました。今では考えられませんがパソコンは物珍しい機器で、一部の子どもたちは、塾に早く来てキーボードの感触を楽しんでいました。
その後、20世紀が終わるころ(今から20年前くらい前)、私の授業を映像にして、今の伸栄学習会の個別指導の原型を作りました。さらに、必要な映像を自由に見ることにできるビデオ・オン・ディマンド(VOD)を取り入れ、授業で活用を始めました。当時、VODを取り入れて教室全体にパソコンを設置している塾はほとんどなく、新しい教育のあり方として注目される一方で、一部の保護者や教育関係者からは、「教育にパソコンを使うなんてとんでもない」と批判もされました。私自身は教師の端くれとして、科学の進歩は教育のあり方を大きく変えるのではないかと大いに期待していました。
ただ、このところ、教育のIT化の過熱化には疑問を感じています。タブレットやスマホなどが魔法の機器のようにもてはやされ、大手を中心とする学習塾、私学、さらには一部の公立小中校で導入が進んでいます。その中で、学習履歴を記録し、授業の動画を配信すれば成果が自動的に上がるような風潮を生んでいます。
確かにタブレットやスマホは便利な道具です。しかし、タブレットやスマホを使いさえすれば、自動的に成果が上がるとは考えられません。IT機器はいってみれば、教科書や問題集の進化版です。教科書や問題集は使い方によっては成果が上がるし、使い方が下手なら成果は上がりません。IT機器も同様です。要は使い方次第です。現状を概観すると、まだ、「これだ!」という仕組みは存在しないように感じています。ノウハウの成熟はこれからだと言えます。
以上のようなことを考えつつ、伸栄学習会ではタブレットの導入などを見合わせてきました。ただ、もちろん、ITの進展に対して目をつぶっているわけではありません。技術の進展には常に高い関心を払っています。今後も周囲の動向をウオッチしつつ、画期的なシステムを積極的に導入して、子どもの学習環境を改善していきたいと考えています。