2005年12月号……『シャープペンシル』 塾長/青沼 隆
当学習会では1980年に塾を開設して以来、ずっとシャープペンシルの使用を禁止しています。残念ながら、塾を開いて25年を経過した現在でも、このルールは子どもたちに徹底していません。毎日、必ずと言ってほどルールを破る子どもがいて、注意をしなければならないのが実情です。恐らく、ルールを破っている子ども(大半が中学生・高校生)は、承知の上でルールを破っている節があります。教師と生徒のいたちごっこはまだまだ続きそうです。
数年前からは、講師の強い要請もあり「シャープペンの使用禁止」という掲示を教室に出しています。実は、私はこの種の掲示は好きではありません。なぜかというと、禁止しているのは何もシャープペンシルに限ったことではないからです。当然ながら、教室内では、おしゃべりも立ち歩きも飲食も禁止です。もし、このような禁止事項をいちいち掲示したら、教室の中は掲示でいっぱいになってしまいます。
シャープペンシルの使用を注意された子の多くは、「なぜ?」と質問します。その子が本気にその理由を知りたいと私に伝わったときは、その理由を説明をすることもあります。しかし、理由がわかったからと言って次回から使用を止めるとは限りません。止める子は、理由を聞く聞かないにかかわらず止めますし、止めない子は理由がわかって納得してもまた使います。
「子どもは納得すればルールに従うものだ」と教育評論家が言っていますが、私はそのようには思っていません。むしろ、ルールというのは、子どもが納得するしないにかかわらず、守らせるものは守らすべきだと思っています。例えば、「おはようございます」という挨拶を1つとっても、これを理論立てて子どもに納得させることはかなり難しいと思います。このような習慣やしつけは、ケチをつけようと思えばいくらでもできるからです。それに、もし、理屈で説得できるなら、どの子どもも、朝、「おはようございます」と挨拶しているはずです。私が子どもたちに聞いた限りでは、多くの子どもはキチンと挨拶していないようです………
ルールは、確かに、その理由や背景を説明することも大切です。しかし、同時に、「わかるわからないにかかわらず、守らなければならないことがある」ということを示すことも必要です。でも、もっと大切なことは、「なぜこのルールが必要なのか」ということについて、安易に質問する前に、自分自身で考える習慣をつけることです。勉強も同じですが、「教えてもらえさえすれば何とかなる」というのは誤りだと思います。
でも、今日はせっかくですから、シャープペンシルの使用を禁止している理由をお伝えしたいと思います。
2つあります。
第1は、芯が引っかかって出なくなってしまうことがあるからです。このようなときに、授業中でさえもシャープペンシルの分解を始める子どももいます。それに、芯が引っかかれば、思考が中断してしまいます。特に、数学の計算過程などではミスの原因になります。ですから、入学試験などの大きな試験のときは、絶対に使うなと注意しています。
第2はもっと大きな理由です。それは、塾に来る前には、勉強をしようという気持ちになって欲しいということです。エンピツの場合、必ず、使う前に“削り”の作業が必要になります。シャープペンシルはその必要なんかありません。塾に来る前には、数本のエンピツを削り、その過程で、気持ちを整えて欲しいと思っています。これが、当学習会でシャープペンシルの使用を禁止している一番の理由です。
子どもの中には、「エンピツを持っていない」と言う子もいます。
携帯電話の使用料をエンピツに回していただけたらと考えます。