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2015年10月号……『やっぱり エンピツ!』 講師/山内 雄司

各企業による教育機器の発達は目覚ましいものです。パソコンの利用は当たり前。学校の授業でタブレットが使用され、電子黒板やパワーポイントを使って授業をする先生も珍しくはなくなりました。英文を入力するとネイティブに近い発音をしてくれるソフトもあります。もちろん使い方が大切であって、ただ最新技術を用いればいいというものでもありませんが、今後も発展が続いていくことでしょう。

それとは対照的に、17世紀からほとんど形を変えずに使われ続けている「教育機器」があります。

鉛筆とノートです。

タブレットや教育ソフトが発達しても、鉛筆とノートが不要になるのはまだまだ先のことでしょう。というよりも、こんなに便利な学習用具を不要にするほどの教育機器というのは想像の域を離れています。

それほど学習に無くてはならない鉛筆とノートですが、身近に過ぎて大切さが意識されにくくなってきたように思えます。また、道具であるからにはうまく使うべきだという常識もつい忘れがちです。

伸栄学習会では「シャープペンシルの使用禁止」という決まりを設け、「エンピツの使い方を熟達させる」ことで学習効率の向上を図っています。「シャープペンを使わずにエンピツを使いなさい」と言うと、なかには反発する生徒もいます。他の子が禁止されているところを自分だけ使っていることに優越感を持つ子もいます。しかし、エンピツを使うことには、たしかに有効性があります。その効用についてはすでに塾長がここに何度か書いていますが、改めて何点か挙げてみます。

①筆圧の強化と持ち方の矯正。字を丁寧に書かない子がシャープペンを使うと、ほとんどの場合直りません。シャープペンの後ろの小さい消しゴムで答案を汚しまくる子も多くいます。

②授業の集中の持続。授業中やテスト中にシャープペンの芯が切れて、いつまでもカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ‥‥。しまいに分解を始めて中のバネを取りだしたり、どこに芯の欠片が詰まっているのか叩いたりし始めます。こうなったらその時間の授業やテストはすべて無駄だったと言いきれるほど集中を欠きます。また、友だちに「シャー芯貸して」と話しかける子。自分の授業は台無し、友だちは道づれ。

③授業の心構え。エンピツを使うには事前の準備が必要です。家を出る前に必要な本数を削り、折れないようにキャップをつける。他に、今日の授業で必要なものは何か考える。そうして授業に臨む子と、家で一度もカバンや筆箱を開けない子とでは差は歴然です。しかし、事前に削らずに授業中に削るようではこの効果は期待できません。

④勉強量が可視化できる。エンピツは使うだけ短くなります。エンピツを何本使い切ったかというのは、どれだけノートを取り演習をしたかを表します。それが自信につながります。何かの拍子にポキポキ折れるシャープペンの芯ではわからない感覚です。

ざっと挙げたこれだけの効用でも、使う価値は充分にあるのではないでしょうか。

エンピツは画材としても優れています。熟達すればエンピツと消しゴムだけでかなり見応えのある絵を描くことができます。また、私が小・中学生のころはエンピツの持ち手にモアイ像を彫って楽しみもしました。個人的にはエンピツを削るときには刃物を使うようにしています。先の鋭さを調整して書きやすくするためです。そのためにわざわざ刃物の問屋さんにエンピツ削り専用の肥後守を求めに行きました。この刃も砥石を使って自分で研ぎます。今は子どもに刃物を持たせることには賛成できませんが、こうして手先の器用さや工夫する力が養われるのも事実です。

子どもたちにも「やっぱりエンピツっていいな」と思ってもらえるよう指導していきます。

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