2006年7月号……『ごまかし勉強』 塾長/青沼 隆
『ごまかし勉強』というのは、跡見女子大学教授の藤澤伸介氏のネーミングです。3年ほど前、『ごまかし勉強』という本が出版され、塾や学校などの教育関係者の間で話題になりました。そんなところ、先月、著者の講演会が開かれ、遅ればせながら直接話を聞いてきました。
「ごまかし勉強」というのは、「テストのために勉強して点さえ取れればいい」という勉強法で、「手抜き勉強」「間に合わせの勉強」「一時しのぎの勉強」のことを言います。
「ごまかし勉強」は、勉強を深く掘り下げることもなく、これまで学んできた内容との関連付けもされません。ですから、勉強に面白さを感じることもありませんし、テストが終わればすぐにアワとなって消えてしまいます。
「ごまかし勉強」と「正統的な勉強」をくらべると次のような違いがあります。
ごまかし勉強 | 正統の学習 | |||
内容 | 子どもの言動 | 内容 | 子どもの言動 | |
学習範囲 | 範囲を限定
試験に出るところだけ勉強 |
どこが出るのか教えて | 範囲を拡大
関連する分野に目を広げる |
いろいろ調べてみよう |
自立性 | 他人に依存
教師や出版社の作った暗記 材料を使う |
テストに出そうなところをまとめて教えて | 独創志向
勉強内容を自分でまとめる |
表を作ってまとめてみよう |
勉強方法 | 機械的丸暗記 | 点が取れるなら暗記すればいいや | 意味理解志向 | そうか,なるほど、こんな仕組みだったんだ |
工夫 | 物量主義
機械的に反復練習する |
やり方を考えるの面倒、とにかく何回もヤロー | 方略志向
やり方や、どうすれば間違えないかを考える |
勉強どう進めようかな、どうやったら上手くいくかな |
プロセス | 結果主義 点数のみにこだわる |
アッ合っている。よしよし! | 思考過程重視
○や×の理由 を考える |
タマタマ合っていたけどなぜかな? |
表をご覧いただいて、「ごまかし勉強」がすばらしいとお感じなる方はいないと思います。ただ、現実的には、子どもたち自身はもちろん、子どもたちを取り巻く環境全体に、「ごまかし勉強」は蔓延しています。実は、正直なところ、当学習会も例外ではなく、例えば、試験前の「予想問題」も「ごまかし勉強」と言えなくもありません。
「ごまかし勉強」の根本的な原因は、著者が語るように、学校や入試が客観テスト(正答が1つになるテスト)が行われているからです。客観テストで良い点を手っ取り早く取るためには、ある意味で「ごまかし勉強」は効率的です。
その上、「ごまかし勉強」は、教師にとっても出版社にとっても、そして塾にとっても「ラクな教え方」です。「ここが出る」「ここがポイントだ」と言っていれば、子どもたちは決して文句を言いません。その意味で、「どこにも不都合が生じない」勉強法とも言えます。
当学習会にとっても、「ごまかし勉強」は、とても微妙で難しい問題です。「これだ!」という特効薬はありませんが、「ごまかし勉強」の危険性を察知しつつ、子どもが勉強を好きになれるような指導を心がけたいと考えます。