2001年5月号……『これだけはやめて欲しい親の言葉』 塾長/青沼 隆
1.勉強しなさい。
2.寝なさい。
3.頑張ってね。
4.お前はダメだ。
5.志望校を変えたら。
6.○○君は大学へ行っているからいいけど。
……友達(大学へ通っている)と遊びに行くとき……
7.いつも遊んでばかりいる。
8.成績が上がっていない。
9.○○さん伸びてきたわね。あなたも頑張らなくちゃ。
10.あなたの実力じゃはっきりいって無理だよ。
11.ボーっとしていいの。
12.東京に出してあげるんだから。
13.結局あなたの人生なんだから好きにしなさい。
14.今やっておかないと後で後悔するのはあなたよ。
この言葉は、大手予備校の河合塾が、高校生・浪人生から「これだけはやめて欲しい親の言葉」を集めたものです。河合塾では毎年春にこのアンケートを行っているそうです。いずれの言葉も、「やっぱり」と感じさせられるものばかりです。しかし、この中で、子どもたちが一番嫌う言葉はどれかおわかりになるでしょうか。よろしければ、もう一度、上の言葉を眺めてみて下さい。
実は、子どもたちが一番嫌がり、傷つく言葉は13番(下から2番目)だそうです。これは私には意外でした。「あなたの人生なのだから………」という言葉は、私自身も塾で何度も耳にしたことがあります。どちらかといえば、進歩的な母親が発するケースが多かったと思います。これまで、この言葉にトゲを感じたこともなく、子どもたちにどのように受け止められているかも深く考えたことがありませんでした。
ただ、考えてみますと、大学受験生は精神が不安定な状態にあります。まして、浪人の場合、入試に失敗してそれなりに心に傷を負っています。このような子どもたちが、親から突き放されたような言葉を発せらると、傷の上に塩を塗られたような痛みを感じるのかもしれません。また、大学生も含めて、最近の子どもたちは精神面で幼くなってきています。成人式の騒動はその一例とも言われています。こんな17~18歳の子どもたちに、自分で自分の人生をデザインしろと言っても無理があるのかも知れません。
よく、「放任主義」という言葉も耳にします。子どもの自主独立を尊重するのは、それなりに意味があることかと思います。ただ、親の教育方針はともかく、この言葉(あるいはこの親の姿勢)が子どもたちを傷つけているとしたら、少し考えてみる必要があるかと思います。
改めて、この言葉を読み返してみますと、私自身、果たして自分の人生を自分自身で「好き」にしているかどうか自信がなくなります。「好き」にしているつもりでも、しがらみや運命の糸に操られて、泳がされているような気もします。自分では主体的に「生きている」つもりでも、他者の意向や時代の流れの中で「生かされている」のが私の人生かもしれません。あるいは、「好きにする」という判断そのものも、自分自身の「本心」ではなく自分の「煩悩」から発せられているものなのかも知れません。
そう考えますと、“自分の人生を自分の好きにする”というのはもっともらしい言葉ではありますが、案外、実態のない言葉なのかもしれません。子どもたちがこの言葉を嫌う深層に、親の発する言葉の実態の乏しさ、そのような言葉を発する親の責任放棄の姿勢を敏感に感じ取っているのかも知れない………そう考えますと、少し怖い気がします。